冬季アルパイン
平成9年理学部卒 真達 慶次郎
山行概要
日時:2024年12月29日~31日
メンバー:真達 慶次郎、若月稜斗
行程:
- 29日:坊主尾根取付ゲート(5:55)→坊主尾根2094mのコル(13:25)
- 30日:キャンプ地(3:20)→赤石沢大滝取付き(4:00)→第一バンド(9:50)→奥壁取付き(13:00)→甲斐駒ヶ岳(17:00)→キャンプ地(21:30)
- 31日:キャンプ地(8:25)→坊主尾根取付きゲート(13:50)
概念図
記録
ここ数年、年末はなるべく登られた記録がなく、一直線に山頂に伸びるルートを探して若月と登ってきました。
そしてそれらはどれも素晴らしいルートでしたが、「登られた記録がない」と言うのが難しく、さすがにネタ切れ・・
そんな時、秋に娘と鳳凰三山を歩き、正面に北岳バットレスや甲斐駒赤石沢奥壁が見えて、メジャーな壁ではありますが、カッコいいな、と思って写真を取って若月に送ると、
「赤石沢奥壁に行ってみたいです!」
と即答で返事が、
そして、後日送られきたルートは一般的な黒戸尾根からのアプローチではなく、坊主尾根から登り、赤石沢へ下って赤石沢大滝を登り、奥壁へ至るもの。こんな登り方する人はいないでしょ?と言ったラインで、私もすっかり気に入ってしまいました。
若月は半分冗談で提案したみたいで、八ヶ岳のトレーニングで会ったときは、
「やっぱあれは厳しいですよね~」
と話していましたが、
「いや、いいよ!こんな計画は誰もやらないだろうし、ウチららしいじゃない?行ってみよう!」
と話して、長い赤石沢からの甲斐駒ケ岳計画 が実現しました。
坊主尾根に取り付きます。
今回も若月がたくさん荷物を背負ってくれるので助かります!
目指す甲斐駒ケ岳。
いつもなら、
「よし、思いっきり自分の力をぶつけてやろう!」
と意気込むところですが、今回は先週の権現岳での左足の打撲から、ようやくまともに歩けるようになった状態なので、
「甲斐駒さん、お手柔らかにお願いします。。」
といった気持ちです。
若月は昨シーズンに「キャトルキャール」と言うマニアックな氷のルートを登るため、坊主尾根を途中まで登っているそうで、道案内はお任せです。
左足は大丈夫そうで、とりあえず安心。
本当は27日スタートの予定でしたが、2日遅らせてもらって、助かりました。
坊主尾根はなかなか険しく、重いザックを背負ったままでは降りられない箇所もあり、先にザックを落として空荷で降りる作戦が、ザックは着地に失敗し、斜面をゴロゴロと・・
回収に向かう若月。(笑)
本日の目的地、2094mのコルに到着。
ここをベースにしました。
谷底まで下って赤石沢大滝をチェック。
なかなかの迫力です。
お土産に水を4リットル汲んでテントに戻りました。
翌朝、まずは昨日つけたトレースをたどって赤石沢へ下降。
長い1日の始まりです。
2ピッチ目は若月がリード。
難しくはありませんが、たっぷり2ピッチのスケールがあり、登り甲斐がありました。
大滝のあとは、一旦ロープを片付け、暗闇の赤石沢を登ります。
朝日に照らされるAフランケ。
若月はスーパークラックに、私は二十歳の冬に登った左フェースにとそれぞれ思いを馳せました。
そして目指す奥壁も近づいてきました。
最高の気分です!
第一バンドの手前から傾斜が強くなり、1箇所悪いところで若月から、
「ロープください!」
のヘルプ要請。
軽量化のための秘密兵器、フローティングロープを上から投げました。
そのままフローティングロープでリード。
チョックストーンの乗越しが激悪ムーブでしたが、このロープのリードでは落ちられないので、残置スリングに頼ってしまいました。。
ここで若月と作戦会議。
当初の計画は左ルンゼを登る予定でしたが、ちょっと時間が遅く、
「中央稜に変更する?」
と話しましたが、
若月は、
「このまま第一バンドを詰めてみたらどうでしょう?」
と、
確かに中央稜ではありきたりで自分達の登山らしくない?と感じていたので、
「じゃ、第一バンドを詰めながら、よさそうなラインがあったら奥壁に取り付こう!」
と、引き続き第一バンドを詰めることにしました。
こまめに先頭を替わりながら登りました。
(すぐに交替を要求する私。笑)
ラッセルの振動で、突然、斜面に亀裂が入り、厚さ50cmくらいが雪崩れて行きました。
このままラッセルを続けるのも大変なので、適当なラインを見つけ、奥壁に取り付きます。
2ピッチ目。
草付きをダブルアックスでザクザクと気持ちよく登ります。
今日は50cmくらい下に弱層ができていて、傾斜が落ちたあとも流されないようロープは出して登りました。
バックは鳳凰三山と富士山。
秋に親子登山であそこからこっちを眺めたことが今回の登山のきっかけになりました。
甲斐駒ケ岳に登頂!
若月はキャトルキャールのほか、今年、黒戸尾根を8合目まで4回登っているそうですが、山頂は初めてだそうです。
日没直後の山頂で若月とがっちり握手して登頂を祝福しました。
今日は風が穏やか。
日没直後の神々しい景色の中でゆっくりロープを片付けました。
すぐに暗くなりましたが、8合目まではトレースがバッチリ。
夜景を堪能しながら、のんびり下降しました。
このまま黒戸尾根を下りたいところでしたが、途中から坊主尾根へ。
方向が合っているか何度もチェック。
坊主尾根の下降はもちろん初見。
暗闇で先が見通せず、何度も岩場の上に出てしまい、そのたびに若月の特殊な嗅覚で右に左に回り込みながら急斜面を下降。
早くテントに戻りたい気持ちを抑えて、ゆっくり落ち着いて下りました。
21時半。ようやく我が家に戻ってこれました。
テントに抱きついて喜ぶ若月。
食後は若月の持ってきた大吟醸をいただきました!
普段はとっくに寝る時間ですが、明日は帰るだけ。
今日のこと、これからのことなどを語り合いました。
(若月は「雪山はもう今シーズンは満足かなー」などと。おい!)
テントを片付け帰ります。
甲斐駒はガスの中で、今朝は風も強く、昨日は絶好の機会を捉えたようです。
帰りの坊主尾根も気が抜けません。
元気なときなら登山道がないことを楽しめますが、今日は疲れてヨタヨタ・・
普段の登山道のありがたみを感じます。
まとめ
今回も3日間、誰にも会わず2024年の最後を自分達らしい登山で締めくくることができました。
自分達で考えたオリジナルラインを完遂できた満足感はもちろんありますが、今回は若月に迷惑を掛けず無事に戻ってこられた安堵の気持ちも大きかったです。
来週には50歳を迎え、ラッセルではすぐに息が上がってしまい、正直、体力的な衰えは感じざるを得ません。。
これからの山の楽しみ方を考えないと、と思う山行でもありました。
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