アルパインクライミング
若月 稜斗
山行概要
日時:2026年8月7日~14日
メンバー:若月(OB) ,大井(OB),堀(大学生), 菅原(大学生)
行程:
- 7日:Calgary(カナダ南部の大都市)集合
- 8日:Calgary[8:30]→Conrad Kain Hut Trailhead[15:30]→Kein Hut Boulder Camp[18:40]
- 9日:Kain Hut Boulder Camp(5:30)→East Creek Camp(12:30)
- 10日:大井/若月:Beckey-Chouinard Route, South Howzer, 菅原/堀:West Ridge, Pigeon Spire
- 11日:大井/若月:レスト, 菅原/堀:Kain Route, Bugaboo Spire
- 12日:若月/堀:Tobin Sorenson Route, Snow Patch, 大井/菅原:Kingdom Route, Snow Patch
- 13日:East Creek Camp(5:50)→Kain Hut Boulder Camp(9:40)
- 14日:Kain Hut Boulder Camp(8:20)→Conrad Kain Hut Trailhead(10:30)→Calgary
バガブーの位置
バガブー概念図
記録
8月のお盆連休を利用して、海外へクライミング遠征に行ってきました。
行き先は、カナダ南西部に位置する山岳地帯「Bugaboo Provincial Park(以下、バガブー)」です。広大な氷河から巨大な花崗岩の塔がそびえ立つ特徴的な景観から、北米のクライマーからは「カナダのパタゴニア」と称されることもあります。
私(若月)は昨年の8月に初めてバガブーを訪れ、その日本離れした景色と、厳しくも美しいクライミングルートに深く感動しました。今年も絶対に行きたい!という強い思いから、半年以上前から「バガブー行こうよ~」と山岳部メンバーに猛プッシュ。3人のメンバーが来てくれて、念願のバガブー合宿が実現しました!
まずはカルガリーというカナダ南部の大都市で集合。
みんな無事に揃って一安心。
長時間フライトと時差ボケで疲れ気味ですが、出発はもう明日の朝。
買い出しや装備の準備をテキパキと済ませ、
夕食を済ませて、早めに就寝。
このカルガリー、Airbnbを使えばけっこう安くて良い宿が見つかります。
翌日は朝からバガブーに向けてドライブ。
車道沿いの山々も非常に美しいのですが、この日は山火事の影響で良く見えず(残念)
途中で休憩。
道沿いにときどきトイレやごみ箱が整備されているので、重宝します。
ダートで道を間違えて6時間以上かかってしまいましたが、駐車場に到着。
小動物にタイヤをかじられないよう、車に金網を巻くのがバガブー名物。
クライミングギアと1週間分の食料を背負ってアプローチ。
バガブーもかなり煙が濃く、山火事がここまで来たらどうしよう…と不安になりました。
3時間ほど歩いて、ケイン小屋に到着。
奥に見えているのはスノーパッチという岩塔です。
小屋で支払いを済ませ、近くの「ボルダーキャンプ」でテント泊。
小屋からキャンプ地までけっこう下るので、また翌日登り返すことになります。
翌朝は5:30出発。
イーストクリークというキャンプ地まで歩いて、あわよくば簡単なルートを1本登りたいところ。
実は「アップルビー」というキャンプ地の方が近くて一般的なんですが、今回はイーストクリークの近くに若月が登りたいルートがあり、こちらに付き合ってもらいました。
氷河の大きいこと…
行く先は見えているのに、一向に目的地に近づきませんでした。
最後はピジョンという岩塔の南側のコルから、イーストクリークキャンプへ標高300mほど下降。ガイドブックにも載っているアプローチなのですが、これが想像以上に悪かった。
まずは急なガレ場を下って、
さらに長大な雪壁。
落石を警戒してここは1人ずつ順番に。
傾斜が緩んで一安心。
大井は12本歯アイゼン持参でしたが、他のメンバーは軽登山靴+チェーンスパイクの軽装備で、かなり緊張しました。
到着したのは12時過ぎ。
予想以上に苦戦したアプローチでしたが、「大冒険だった」と、どこか皆の表情は満足そう(笑)とりあえずランチタイム。
北米名物・アップル&ピーナッツバター。
これは日本でも流行らせたい!
テントの背後はこの景色。
こんなところに5泊もできるなんて贅沢すぎる!
驚いたことに、キャンプ地にはトイレが設置されていました。
近くに雪解け水も流れていて、水とトイレの心配はありません。
その後、若月と大井はベッキー・シュイナードルートを偵察。
このルートを登りたくて、イーストクリークキャンプまで来ました。
堀と菅原はピジョン方面へ。
この偵察により、イーストクリークキャンプのアプローチは、先ほど歩いたピジョンの南側のコルから下降するルートよりも、ハウザーとピジョンのコルから下降した方が、ずっと楽なことが分かりました。
翌朝。
若月と大井は3:00出発でハウザータワーのベッキー・シュイナードへ。
菅原と堀は5:00出発でピジョンのウエストリッジへ、それぞれ出かけました。
このウエストリッジ、グレードは5.4と易しいながら、とても評判が高いルート。
氷河で磨かれた岩はとても硬く、登り切った先は岩塔の頂上。バガブーのルートにはグレードでは測れない価値があります。
順調に登攀を楽しんで、昼過ぎには取り付きに戻ったようです(さすが)
一方のベッキーシュイナード組は、全20ピッチ以上の長大なルートに苦戦中。
昼を過ぎてもまだルートの中間くらい。
テントに戻ったのは夜11時過ぎ。
菅原と堀が用意してくれた夕ご飯を食べて、そのまま泥のように眠りました。
翌日、菅原と堀はバガブースパイアーのケインルートへ。
(若月と大井は前日の無理がたたってレスト)
ルート前半は岩稜歩き、後半は5.8程度のクライミング。
グレード自体は易しいですが、「バガブー」の名を冠する岩塔への初登ルートであり、これも格調高い1本。
順調に登ってピークに立ちましたが、この日は特にスモークが濃く、景色は楽しめなかったそう(残念)
夜は夕食を食べながら、翌日の作戦会議。
クライミングとキャンプのサイクルが体に馴染んで、生活の一部になっていく感覚。1冊しかないトポを回し読みしながら「明日はどこを登ろうか?」と、仲間と話す時間は、最高に贅沢なものでした。
翌朝は5時過ぎに出発し、全員でスノーパッチへ。
まずはピジョンとハウザーのコルまで登り返し。
コルを超えると、スノーパッチの見事な大岩壁が見えました。
一歩近づくごとに増していくワクワク。
高ぶる気持ちとは裏腹に、降り出す雨…
しばらく岩の下で雨宿り。
1時間ほど待つと雨(というより雪?)が止んだので、登攀開始。
大井と菅原は「キングダムルート」へ、
若月と堀は「トビン・ソレンソンルート」に、それぞれ取り付きました。
キングダムは傾斜の緩いリッジを辿る、弱点を着いたルート。
順調に登攀して、大井と菅原は午後1時半にはトップアウト。
一方のトビン・ソレンソンは垂壁を真っ向から攻めるルート。
各ピッチが難しく、大井と菅原が懸垂下降を終えるころ、若月と堀もようやくトップアウト。
帰路でまた雨や雪に降られましたが、この日は煙も晴れ、ようやくバガブーらしい景色が楽しめました!
翌日は未明から風が強まり、本当に登れるのか?という雰囲気。
とりあえずテントを撤収し、
全ての荷物を背負って、ピジョンとハウザーのコルまで登り返しました。
コルを超えても冷たい風が強く、とても素手でクライミングできるようなコンディションではなく…
残念ですがクライミングは諦めて、氷河の上をケインハットまで下山しました。
やることもないので、昼寝したあと余った食料でパーティを楽しみました。
最終日はボルダーキャンプから駐車場まで下山。
5日間岩と氷河ばかり見ていたので、植物がいつもより鮮やかに見えました。
順調に駐車場へ。
山火事が来たら、小動物にタイヤを齧られたら…と不安でしたが、車は無事で一安心。
車に乗ってからは、気分を替えて観光モード。
まずは小さな商店でバーガーを食べて栄養補給。
帰り道にレイク・ルイーズに立ち寄りました。
バンフと合わせてカナダを代表する観光地ですが、バガブーと比べてしまうと大きな感動はなく。
カルガリーの100kmほど西の、キャンモアという街で外食。
自炊ばかりでカナダらしいものを何一つ食べてなかったので、最後に贅沢しちゃいました。
アップルビーキャンプ
本記録では行かなかったが、バガブーでは最も一般的なキャンプ場。ドーム状の平坦な岩の上にテントを張っていきます。
食料ハンガー
小動物がめちゃくちゃ食料を狙ってくるので、ハンガーに吊るすか、ロッカー(ベアボックス)を使いましょう。マジで荒らされます。最悪テントに穴を開けられるかもしれません。
キャンプ場料金 ※2026年9月現在
1人1泊10ドル+Non-Residens Fee20ドルで良いと思います。封筒に名前や連絡先を書いて、その中に現金を入れてポストに入れる方式。
ケイン小屋でも支払い可能です。
アップルビーキャンプの水道
近くの氷河湖の水を引いているだけなので、煮沸/濾過推奨。
イーストポストスパイアー(アップルビーキャンプから)
アップルビーキャンプから最も近い岩塔。キャンプ場から、1~2時間程度の岩稜歩きで頂上に立てます(難易度は大キレットくらい?)
クレセントスパイアー(アップルビーキャンプ方向から)
大きな裾野が印象的な双耳峰。なんだか上品で女性的な美しさがある、と思うのは私だけだろうか。
アップルビーキャンプ場からのアプローチも近く、比較的気軽に取り付けるルートも多い。
バガブースパイアー(スノーパッチから)
「バガブー」の名を冠するどっしりした岩塔。どこから見てもカッコ良い。
写真右のスカイラインは「ノースイーストリッジ」という超クラシックルート。
スノーパッチスパイアー(アップルビーキャンプ方向から)
パッチのような雪がチャームポイント。実は平たい形をしており、写真の奥行方向には薄い。
おそらくルート数はこの岩塔が最も多く、まだまだ楽しめそうな予感。
ピジョンスパイアー(南側から)
周囲を広大な氷河に囲まれた、グレッシャー・トリップのランドマーク的な岩塔。
本記録でも登場した「ウエストリッジ」は超人気ルートで、バガブーの中で最もよく登られているルートの1つかもしれない。
ハウザータワー岩塔群(ピジョンから)
写真左から順に、サウスハウザー,セントラルハウザー,ハウザースパイアー。
山深いバガブーの中でも、最も高く遠い岩と言って良いだろう。「ベッキーシュイナード」や「オーアラウンザウォッチタワー」を筆頭に、格調高いルートが揃う。
Bugabooのクライミングガイド
バガブーでクライミングするなら必須!
まとめ
バガブー全域を通して一切電波は通じず、滞在はシャワーも電源もないキャンプ場。
担ぎ上げられる食料は限られ、その貴重な食料すら小動物に狙われ続ける。
アプローチを阻む氷河に、体温と手指の感覚を奪う冷たい風、そして何ピッチ登っても遥か上に見えるピーク…。
同行してくれたメンバーも含め、そのあまりの山深さと桁違いのスケールを、恨めしく思う瞬間もあったでしょう。
けれど、天気がいい日の景色は最高だし、一度登ったルートや歩いた氷河は、一つ一つの模様まで愛おしく思えてきます。
何か難しいルートを登るというよりも、とにかくその雄大な大自然の中に身を置きたくなる、私にとってバガブーはそんな場所です。
幅広い技術や知識が活かせるという意味で山岳部向きの岩場ですし、ぜひまた計画しましょう!
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